寝るときに靴下を履くか履かないか問題

11月に入っても、温かいような日が続いてましたが、ようやく気温が下がってきました。

 

からだは冬に向けて、変わろうとしているのに、本来の季節の進み方ではないので戸惑っているようにも思え、患者さんにも、冷えからくる不眠のご相談が寄せられるようになりました。

 

ネットの中でも、健康についてのコラムやメッセージは溢れかえっていて、いったい何が正しいのかわからなくなっています。

 

どんなことでもそうですが、正しいか正しくないか?ではなく、自分にとってどうなのか?という視点で、情報は咀嚼、吟味したほうがいいですね。

 

たとえば、一口に冷え症といっても程度の差もあり、秋になって冷え始めたのか、一年中冷えているのかによっても違います。

 

「私、一年中冷えているんです・・」と仰る患者さんを継続して診せていただいていると、一回一回、冷えている範囲も分布もどんどん変化していかれていることがわかります。

 

通院して頂いているということは、気になる病症があって、治療をしている過程にあるということですから、からだは変わっていくのが当然なのですが、とりあえず、主訴となる症状がなくなって、今のこの状態を保ちたいからとメンテナンスのために通ってくださっている患者さんのおからだを診ていても、どんどん変わっていかれます。

 

 

で、タイトルの「寝るときに靴下は履いた方がいいのかどうか?」です。

 

私は、基本的には履かない方がいいでしょう・・という立場です。

 

睡眠に関しては、科学的な研究が近年目覚ましくすすんでいて、昨年は『睡眠負債』という言葉が流行語大賞にノミネートされるなど、注目される熱い分野です。

 

その研究の総本山ともいえるスタンフォード大学の西野精治教授が昨年上梓された

 

『スタンフォード式 最高の睡眠』

 

の副題は『体温と脳が最高の睡眠を生む』ですが、

 

睡眠の質は眠りはじめの90分で決まること。

 

最初の90分をしっかり深く眠ることができれば最高の睡眠がとれるということ。

 

そのためには、深部体温を下げることが大切であるということを説いていらっしゃいます。

 

 

例として、小さい子どもだった頃の入眠前をイメージしてください。

 

 

入眠前の子どもの手足は温かくなり、皮膚の温度を上げています。

 

何がおきているのかというと、一旦皮膚温を上げ、手足にたくさんある毛細血管から熱放散することで効率的に深部体温を下げています。

 

なぜ、深部体温を下げているかというと、それこそ眠りへの入り口だからです。

 

眠っているときは深部体温は下がり、皮膚温は逆に上がっています。

 

よく冬山で遭難するシーンで「寝るな!寝たら死ぬぞ!!!」というのがありますが、

 

極度の寒さの中、肺に冷たい空気が入り、深部体温が下がりはじめると、入眠へのスイッチが入り、同時に身体が震えだします。

 

体温維持は生命維持とイコールですから、危機的状況の中、自律神経は何とか体温を上げようと筋肉を動かして熱産生を開始するのですが、それでも上がらないと、身体は動きを止めます。

 

雪山で眠くなる理由は、脳の中でも生命維持に必要な自律神経(呼吸、心臓、体温維持)を司る部分は動かし続け、命に直接かかわらない(思考、消化、筋肉の動き)部分はスリープモードに入るからです。

 

睡眠中は深部体温が下がるため、寝ると更に熱が奪われて低体温症になり、死に至るため、「寝たら死ぬぞ!」

という警告になるわけですが、冬山ではない日常のベッドの中では、安心して深部体温を下げて安らかな眠りについて頂きたいと思います。

 

コツは「皮膚温と深部体温の差を縮めること!」

 

 

深部体温は上がった分だけ大きく下がろうとします。

 

寝る90分前までに入浴をすませ、体温を大きく上げてから下げる態勢に入ります。

 

湯船にゆっくり浸かるのが理想ですが、時間がない時はバケツにお湯をはり、膝下までの足湯をして、足の血行をよくして、熱放散を盛んにします。

 

生理的な熱放散がおきるのは、表面積が大きく、毛細血管が発達している手足なので、電気毛布や靴下で覆ってしまうと、この熱放散がおきなくなってしまうので、ダメなんですね。

 

ただ、冷え症さんのうち、自力で熱を産出できにくくなっている方は当然、熱放散もできないので、靴下はやむを得ないと思います。

 

電気毛布は朝まで温度が変わらないので、できれば、湯たんぽで温めて寝て下さい。

 

冷えをとる健康法の先生方のお考えの中には、このレベルの方へのアドバイスと思われるのですが、必ず靴下を何重にも履いて寝るようにアドバイスなさっているものもあります。

 

私も30代は、平均体温が35度台の低体温症でしたし、冷え症で寝る時も靴下が手放せなかったので、その状態はよくわかります。

 

でも、それは自己治癒力が落ちているからなのです。

 

本来のあなたではありません。

 

しっかり、自分で熱を生む力が戻れば、靴下なしで入眠できるし、そのほうが熟睡できます。

 

足が冷たくて眠れない・・・。

 

それは身体からの大切なサインです。

 

ぜひ女性臨床鍼灸 ならまち月燈にいらして、ご自分の冷えの状態を把握なさってください。

 

冷え症には、指圧マッサージとお灸がよく効きます。

 

あなたに必要なセルフケアの方法をお伝えします。